お月様の本

暗いお話です。口に出せない思いを文字へ。

そうあるべきことは、やがてそうなっていくだろう。故に問う

「幸せとは何か?」

その質問に、貴方は答えられるだろうか
"幸せ"とは、明確な定義がない為に言葉にするのはとても難しく、
それこそ答えは無数にあるのかもしれない。

ある人は言うだろう
"愛する人と共にいること"
では、子どもは"幸せ"になれないのか?
こんなこと誰にでもわかる。
子どもには、人にはそれぞれの"幸せ"があり、誰かの"幸せ"とは違うということ。

でもこれは定義的なものであって、"幸せ"を説明できるものではない。

それを貴方に質問するとしよう。
何て答えるだろうか?

"お菓子を食べること"
“遊ぶこと"
“寝ること"
"お金を貰うこと"

答えに正解はない
故に不正解もない

いつか科学が華々しいほど発達し、
「幸せとは何か?」
この質問、或いは疑問の"答え"を説明できる時が来るかもしれない。

だがそれは果たして、貴方にとって幸せと呼べるのだろうか?

私は思うのだ
本当に大切なものは、言葉になどできない。

それでいいのだと、思っている。



さあ、それでは、改めて問おう。
"幸せ"とは、何だと思う?

金魚


例えば、鉢の中。金魚は考えるの
「背鰭がもう少し、綺麗だったら?」

私に誇れるものがあったなら、
何か、変わっていたのかもしれない。

それで言うならば、
狭い鉢に収まることはなかったかもしれないし、早死することもないかもしれない。

でもそれは、"例えば"に過ぎないことを
私は良く知っているのです。


彼女は言いました。
「どうしても"私"を辞めたいなら
  今すぐにでも飛び出してしまえばいいのに。
 蓋なんてどこにもないのに」


金魚は思いました。
「だって、もしかしたら、
  もしかしたら…」
水の中はとても無機質でした。


"それ"から飛び出すことは簡単です。
蓋など、どこにもないのですから。

それを私がしないのは、何かを期待をしたり、奇跡を待っているからではないのです。

飛び出してしまうことは自らを辞めること。
それは、死です。
「もしかしたら、もしかしたら。」
もしも話を続け、誤魔化しているだけで、ただ私が臆病なだけ。

それには何の意味も、ないのです。

star

綺麗とも言えない星
こんなのが掴めたところでどうなるんだろう。
そんなことを思いつつも、手を伸ばした
空を掴む自分の手
私の手はこんな星屑も掴めやしない。
ずっと雨が降っていればいい
星を見ることもなくなるだろう
掴めない星はなくなるんだ。
止まない雨が続いて、溺れてしまえばいい
何もせずとも星まで運んでくれるだろう。
そうしたらきっと、私でも届くから。

「届くわけないじゃない、あんな遠く。」

隣から、君の声
行き場をなくした手

「だから、そんなものより私の手を掴む方がよっぽど良いと思うの!」

君の冷たい手
それは心があったかい証拠らしい。

君の笑顔はキラキラと、星のよう。

ぎゅ、と握られている手



ああ、星に届いた。
雨が降らずとも、届いたの。

わたしの手が星を掴んで離さないの。

心中

   一緒に死にましょう。
「Let's die together.」

書き込まれた日付は今日のものだった。
20分に1人は自殺しているこの世界だ、
そんなに不思議なものではない。
それでも、とても身近に自殺は行われているものなのだと思うと、感情が入り乱れて上手くまとめられそうもない。
"線路に飛び込み、壮大に死にたい"
"車の中、練炭を焚いて静かに死にたい"
"海の中へ一緒に逝きましょう"
数々の言葉に手が震えた。
この人達が死んだ後も生き続けるたくさんの人々に迷惑が掛かるだろうに、お構いなしに自ら死んで逝きたいらしい。
この人達は皆口を揃えて言っていた。
"もうどうでもいいのだ"
私には、悲しくなるような言葉だった。
このたくさんの書き込みの中で、今日どれほどの人々が命を絶っただろう。
人の死に近いこの掲示板で、私は何を思い、今これを書いているのだろう。
私にもわからないのだ。
関係のない人々だからこそ、私は何か思うものがあったのかもしれない...
どうして、なんて言うつもりはない
理由など痛いほどに伝わったからだ。
"一緒に死にましょう"
その画面の前、泣いている人がいるかもしれない。
そう思うと、どうしようもなくやるせないのだ。
そんな彼らに、どうしようもなく何かを感じてしまうのだ。
しかし、私に出来ることは何もないだろう
だからどうか、次に生まれてくるときは幸せになってほしいと、どうしようもなく思ってしまうのだ。

      貴方達の幸せを願います。
「I pray for your happiness.」

    ありがとう。
「Thank you.」


今日の書き込みだった
誰のものだっただろう。
私へ当てられた複数の返信に耐えられず、涙が溢れたのだ。

もう、死んでしまっただろうか。
私には確認する術もなかった。

あなたへ

叩かれた頰が熱くなった
「いい加減にしなさい」
冷たく私に言い放つ母は、もう昔の優しい母ではないことくらい分かっているのに。
「ごめんなさい」
痛みがどうしようもなく悲しくて
涙を堪えられないまま謝った。
「分かったならもう部屋行って」
灰皿を投げつけられて、逃げるように階段を上がっていった。
部屋のドアを閉めると壁に爪を立てた
悲しくてどうすることもできなかった
私が悪かったんだろう
母があんなに怒るのだから。
私だけが、邪魔なんだろう


『お父さんに会いたい!!』


私が子供みたいなこと言ったから、
きっと母は私を叱ったのだろう。

そう思っていよう。



なんでだろう

頰が痛くて仕方がない

胸も痛くて耐えられない

このまま死ねる気分だった。







「私に神様なんていない」

じゃあ何に願おうか?


「何でもいいから助けて」



分かってても、願わずにはいられない。

遠く、君に声はとどかない



手を取ってくれなくてもいい
優しい言葉をかけてくれなくてもいい
ただ、私の一番でいてほしい
ずっと友達でいてほしい
嫌いにならないでほしい。



「神様」




私の神様になってほしい。







そんなあなたへ。

私の今日

素直な言葉ほど重いものはない。

 
「本当に、何もできないのね」
 
ぽろ、と零したような言葉
すぐに口を抑える動作
顔を上げない私に狼狽えるその人は、
何も悪くなどなかった。
こみ上げる訳でもなく落ちた涙
嗚咽もなく、ただ冷たい涙が床に。
そういうわけじゃないの、と慌てる口ぶりなど何も響かずに最初の言葉が反響した。
"何もできない"
あれは嘘ではなかっただろう
悪意のない、素直な言葉だ。
だから、深く刺さったのだ。
悲しくも、期待通りに慰めの言葉も降ってこない
手を止めた周りの視線を視界の端に捉えたまま、
震えた手の行き場もなかった。
 
"消えてしまいたい"
 
そう考えて昨日の私を思い出した
 
"死にたいわけではない"なんて、そんなの昨日やこないだの私だ。
今日の私が死にたくてもいいだろう。
 
「あ、謝りなよ…」
 
気まずそうに発せられた誰かの声
それはきっと私に対する本心じゃない
この空気に耐えられない誰かの声
それが引き金だなんて都合良いことを考えて
耐えきれなくなった私はついに逃げ出した。
 
そんなの皆思ってると知っていた
だけど、涙は落ちたし
顔も上げられなかった、手も震えた。
 
やけに暖かい今日の気温
懐かしくも思い出すその温度は、二度と思い出したくない思い出。
そんな中で止まらない涙
無駄に上がっていく息に走る度縺れる足、
後ろは誰もいない
呼び止める声もない
 
 
 
思い出す文章
 
 
 
 
その文章を私のために書いてくれた子
 
あの子と顔を合わせ、出会っていたのなら
 
あの場面で私を庇ってくれて
逃げ出しても呼び止めてくれて
本心で励ましの声が聞こえてくるのではと、
妄想ばかり、
 
妄想しても現実は現実だ。
 
 
 
 
 
「みんな嫌いだ」
 
 
 
 
 
嫌いだ
ただ嫌いだ
どうしても、嫌いなんだ
 
嗚咽が漏れて
それでも叫べない
 
なんて悲しいんだろう
 
あの教室はどうなったんだろう
誰かは笑うんだろう
 
 
私に優しい明日なんてなくて、
今日だって何もなかったことになって
全て忘れて死んじゃえればいい。
 
 
ああ
誰か、かわってくれればいいのに
 
 
だから、帰り道の横断歩道前、信号待ち
私は飛び出してでもしてしまいたかった。
誰か轢いてくれればいい
何も残らなければいい
それで誰かが言った通りになる
 
「……」
 
通り過ぎていく自動車
青になった信号
横断歩道へ踏み出す足
 
 
 
何もできないまま
 
 
ただ、明日も死ぬほど辛い思いをして
 
 
 
 
生きるんだ。
 
 
 
君だけが、支えだ。

例えば。

例えば私が出来た人間だったなら

お母さんは笑っていたし、お父さんもここにいたかもしれない。
辛い思いをさせた友人も他の友人と楽しそうに過ごしていたのだろう。

私にもし勇気があったなら
貴方と会うことを躊躇しないかもしれない。

もし、私が強かったなら
こんなに泣くこともなかったかもしれない。
苦しい胸も腫れた瞳もなかったのだろう。

もし、私が正直だったなら
君とはずっと笑えていたかもしれない。



もし、私が死んでいたなら
こんなに雨も降っていなかったかもしれない。