お月様の本

暗いお話です。口に出せない思いを文字へ。

心中

   一緒に死にましょう。
「Let's die together.」

書き込まれた日付は今日のものだった。
20分に1人は自殺しているこの世界だ、
そんなに不思議なものではない。
それでも、とても身近に自殺は行われているものなのだと思うと、感情が入り乱れて上手くまとめられそうもない。
"線路に飛び込み、壮大に死にたい"
"車の中、練炭を焚いて静かに死にたい"
"海の中へ一緒に逝きましょう"
数々の言葉に手が震えた。
この人達が死んだ後も生き続けるたくさんの人々に迷惑が掛かるだろうに、お構いなしに自ら死んで逝きたいらしい。
この人達は皆口を揃えて言っていた。
"もうどうでもいいのだ"
私には、悲しくなるような言葉だった。
このたくさんの書き込みの中で、今日どれほどの人々が命を絶っただろう。
人の死に近いこの掲示板で、私は何を思い、今これを書いているのだろう。
私にもわからないのだ。
関係のない人々だからこそ、私は何か思うものがあったのかもしれない...
どうして、なんて言うつもりはない
理由など痛いほどに伝わったからだ。
"一緒に死にましょう"
その画面の前、泣いている人がいるかもしれない。
そう思うと、どうしようもなくやるせないのだ。
そんな彼らに、どうしようもなく何かを感じてしまうのだ。
しかし、私に出来ることは何もないだろう
だからどうか、次に生まれてくるときは幸せになってほしいと、どうしようもなく思ってしまうのだ。

      貴方達の幸せを願います。
「I pray for your happiness.」

    ありがとう。
「Thank you.」


今日の書き込みだった
誰のものだっただろう。
私へ当てられた複数の返信に耐えられず、涙が溢れたのだ。

もう、死んでしまっただろうか。
私には確認する術もなかった。