整理
私という人
メメント・モリ
Dear
Forgive me
いらない話をする母が、私の知らないところで、私の知らない人と私のために、私を貶し、馬鹿にして甲高い声で笑う。
「そう!本当にダメなのよあの子!あはは!!!!」
丸聞こえな声を隣の部屋で知らないふりをして何も聞こえないイヤホンを耳につける。
聞きたくないなら、聞かなければいいのに、気になってしまう私はやっぱりどうしようもなく人間なのだ。
私の気持ちも知らないで。
そんな言葉が出てしまうのもなんとなくわかった気がした。
中途半端な点数は母は興味がないとでもいうように煙草をふかしただけだった。
所詮出来損ない。
テスト前に不安だ、不安だ、と私が言えば「低い点数でもいいから」って背中を押した。
なのに、帰って点数を渡せば「ちゃんとやらないからよ!!!」
怒った母が用紙を握り、投げ捨てた。
出来損ないはいらないのだ。
そんな子供は愛されない。
「塾行ってないんだから!!行かなくても出来る子と違うでしょう!あんたは!!!
自分が周りと同じようにある程度出来てると思ったら大間違いよ!!」
ああ、そんなんじゃない
そうじゃないから
わかってる、わかってるから
もうそんなこと言わないで、
「夢もない貴方だから頑張れないのよ!」
「変な二次元好きになって…!馬鹿じゃないの!?」
もうやめて
悲しいから、苦しいから
たかが自分の株を上げたいがために、私を貶さないで
聞いているから
聞こえているから
「人見知りも激しくて、周りの子と何か違うのがかっこいいとでも思ってる!?」
ちがうのに
どうしてなんで
笑わないで
ちゃんと褒めてよ
「私、頑張るからさ」
なんでもない話
酷い、ひどい、と幾分気温の低くなった廊下で蹲り、泣きじゃくる友達。
雨の落ちた音が長い廊下に響く。
パンツ丸見え、なんてどうでもいい事言ってみたけど、やっぱりどうして、とかそんな言葉が口からぽろぽろ涙みたいに。
顔からいろんなもん出しすぎ、なんて失礼極まりない事もちろん言ってみた。
うるさい…、としゃくりをあげながら怒ってたけど。
運命の人だった、どうしても愛されたかった。
そんなような事を言っていた彼女だったけど、少ししてから瞼を真っ赤に腫らして、もういい!って怒ってどっか行っちゃった。
勝手だなあ、なんて思いながら後を追うわけでもなく今度は私がそこに蹲ってみた。
もちろん、誰がパンツを見てくれるわけでもないんだけど、寒い廊下に寒そうなスカートで。
しばらくして、瞼は腫れてないけど鼻水が出た。ズズッて間抜けな音出した後1人で廊下を歩いていった。
なんとなく後ろを振り向いてみたけどそこには友達や私がいるわけではなかった。
ブブって携帯が鳴ったから、少し何かを期待して開いてみたけどただの動画投稿の通知で溜め息ついたら階段で転んだ。
下にいた友達に「パンツ丸見え」って、笑われた。
マザー
勉強している間、母は笑っていた。
遊んでいる間、母は怒っていた。
「どうしてもっとやらないの?」
怖い怖い顔をして、簡単に言ってくれた。
それは決して間違っている事ではないから私は何も言えなかったし、勉強したくない言い訳だってこと自分がよくわかってた。
「...うん」
その通りです、
言わない一言を頭の中で。
安心なんかしてんじゃないわよって
もっと頑張りなさいって
漫画みたいな言葉が突然沢山降ってきて、でも
「所詮はあいつと私の子よね」
生まれる家庭は選べない。
母がいなければ私は存在すらしない。
あなたが生んでくれたから、私は何も言わないよ。
感謝してるから。
「お母さん仕事で疲れてるのよ、ご飯勝手に作って食べて」
外食してきたレストランのレシートが鞄の中からでてきて、母の寝息だけが聞こえるリビングで握り潰してしまう事も出来ずに元に戻した。
私も、勉強大変だったよ。
だから、一緒に作ったりしようよ。
お手伝いするからさ。
「.......寂しい...」
冷めたご飯に涙がおちた。
次の日、何もなかったようにお母さんは笑った。
「おはよう、早く支度しちゃいなね」
本当に何もなかったのだ、母にとっては当たり前のような事だっただけなんだ。
「うん、おはよう」
だから私も笑ったのだ。
その一瞬の優しさでいい、私はそれを求めて貴方の子であり続けるのだろう。
どれだけ私が夜に寂しい思いをしても、次の日母は笑っている。
それでいいよ、おかあさん。